返金できる?暗号資産を取り戻したいあなたへ|現実と注意点

    返金させたい・取り戻したいあなたへ
    ~調査会社に相談する前に知っておいてほしいこと~

    「これだけ証拠があるなら返金してもらえる」と思いますよね?
    LINEのやりとり、Instagramのアカウント、相手の名前や顔写真……。
    これだけ情報がそろっていれば、情報開示請求で身元が分かり、犯人が逮捕されて、返金される。
    そう考えるのは自然なことです。

    「絶対にもうかる」と言われた。
    「二人の将来のために資産を増やそう」と言われた。
    「資金を引き出して、世界旅行に行こう」とまで言われた。
    「結婚しましょう」と言われた。――これはもう、結婚詐欺でもあるのでは?

    犯人は逮捕され、返金されて当然だと感じるのは、決して間違いではありません。

    例えば、相手が企業や知人・友人で、加害者の身元が明らかであれば、逮捕や返金の実現は可能です。
    しかし暗号資産詐欺の場合、ウォレットの匿名性が高く、加害者の身元が判明しないことがほとんど。
    そのため、逮捕や返金が非常に困難なのが現実です。

    それでも――
    「相手が誰かを知りたい」「どうにか返金させたい」「逮捕してほしい」
    そう思ったとき、どんな選択肢があるのでしょうか。

    ここでは、その手段のひとつとして「調査会社」という存在について、冷静に考えてみたいと思います。

    ※このページでは弁護士・調査会社に関する情報を解説していますが、筆者個人としては、被害者が高額な費用を払ってまで利用すべきではないと考えています

    ただし、よくある誤解や実際に相談したい方もいると思いますので、「どんな違いがあるのか」「なぜおすすめしないのか」を正確に説明したうえで、判断材料を提供しています。

    どうか、最後までお読みいただき、正しい判断につなげてください。

    調査会社・弁護士・警察の違い

    スクロールできます
    項目調査会社弁護士警察
    主な役割被害状況の調査、資金トレース法的手続きの代理(告訴状作成、訴訟など)犯罪捜査(逮捕・捜索・起訴)
    権限・立場民間業者(調査専門)国家資格者(法的代理権あり)公的機関(捜査権あり)
    得意なこと資金の流れの可視化、SNS分析など書類作成・交渉・民事/刑事手続き刑事事件としての立件・捜査
    限界・できないこと強制力なし、法的手続きは不可逮捕や捜査はできない法的代理や交渉はできない
    返金の現実性調査で回収に至るケースは少ない勝訴しても回収できない可能性あり基本的に返金されない
    メリット自分で調べられない情報が得られる法的に主張を通せる犯人が逮捕される可能性
    デメリット悪質業者もあり、費用が高額費用がかかり、結果は不確実動かない、対応に限界がある

    調査会社が出来ること

    警察に被害届を出したり、状況に応じて告訴状を提出することは、とても大切です。
    しかし、警察にはできないこともあります。

    たとえば、いくら被害者であっても、捜査情報は基本的に教えてもらえません。
    でも被害者の多くは、「どうして騙されたのか」「相手が誰なのか」など、詐欺の仕組みを知りたいと感じています。


    具体的には、こういった疑問が浮かぶのではないでしょうか。

    • LINEのアカウント、開示請求してくれたのかな?
    • 銀行振込があったけど、誰の口座だったの?調べてくれたの?
    • 送ったお金、今どうなっているの?まだ残ってる?追跡してくれた?

    知りたいことは山ほどある。
    でも、警察はこれらの情報を開示できません。


    一方、調査会社には強制力はありませんが、聞き取り調査や資金のトレース(追跡)を通じて、資金の流れを“可視化”することができます。
    法的な開示請求や口座凍結はできませんが、被害状況の整理や証拠のまとめをサポートしてくれることもあります(※会社による差あり)。

    暗号資産詐欺の被害者の多くは、暗号資産の仕組みそのものに馴染みがなく、専門用語や手口を把握しきれていません。
    当サイトでも自力トレースの方法を紹介していますが、「一人では難しい」と感じる方も多いと思います。

    そんな中で――

    • 被害内容を丁寧に聞いてくれる
    • 分からないことを質問できる
    • 結果をレポートで整理・説明してくれる

    という対応をしてくれる調査会社は、“知りたい”という気持ちに寄り添ってくれる存在になり得ます。
    警察との一番の違いは、ここかもしれません。

    調査会社ではできないこと

    調査会社は民間企業であり、法律事務所でも捜査機関でもありません。
    そのため、警察のように捜査を行うことや、法的な強制力を持つことはできません。

    仮に調査の結果、犯人の情報が判明したとしても――

    • 逮捕などの強制捜査は警察に依頼する必要があります
    • 示談や損害賠償を求める交渉を行いたい場合は、弁護士にバトンタッチする必要があります

    追跡手法の透明性にも限界がある

    調査会社がどのようなツールや手法で資金を追跡しているかは、「ノウハウ」扱いとして非公開にされることが多く、明示されないケースがほとんどです。

    「独自に開発したツールを使用しています」と言われた場合、
    それがどのように資金の流れを追跡したのか、利用者側では検証できないという不安があります。

    たとえば「Etherscan(イーサスキャン)でトレースしました」と言われれば、誰でもURLで確認でき、再現性もあります。
    しかし「独自ツールで解析しました」と言われても、その中身は確認できません。


    調査レポートと警察のトレースが異なることもある

    調査会社が作成した追跡レポートを警察に提出しても、
    警察のトレース結果と異なるケースは少なくないそうです(実際に警察の方から伺いました)。

    警察は、信頼性の高いツール(例:Chainalysisなど)を使用して資金の流れを追っていますが、
    その追跡結果は被害者に共有されません(捜査情報のため)。

    民間の調査会社によるレポートは、警察で「証拠」としては扱われず、あくまで参考資料としての受理にとどまるようです。

    調査会社に依頼する前に知っておいてほしい事

    調査会社と一口に言っても、対応内容や技術力、料金体系はさまざまです。
    中には誠実な会社もあるとは思いますが、残念ながら「返金可能性が高い」「口座凍結できます」などと、過剰な期待をあおる業者も存在します。


    依頼前に理解しておくべき点

    調査会社に相談すると、「被害状況を整理し、資金の流れを可視化する」という意味では、多くのことが分かります。
    しかし、調査会社が返金を実現できるわけではありません。

    加害者を訴えたり、返金を求めたりするには、最終的には警察や弁護士の協力が必要になります。
    つまり、調査会社ができることは「返金の可能性を探る前段階」までであり、その後の法的対応は別ルートになるということを理解しておく必要があります。


    追跡調査の限界

    ブロックチェーンの資金トレースには、公開情報を読み解く力が必要です。
    暗号資産には現金のような「貨幣番号」があるわけではありません。
    TxIDやウォレットアドレスを手がかりに、チェーン上の送金履歴をたどり、残高の変化や移動の根拠を積み重ねていく作業になります。

    しかし、「どのようなツールで、どうやって追跡しているのか」が明示されないことも多く、依頼する側にとっては“ブラックボックス”になりがちです。

    また、複数人から集めた資金をまとめて送金する手口や、スワップ・ブリッジを用いて暗号資産の種類を変えて送金するなど、マネーロンダリングが施されると、追跡の難易度は一気に上がります。

    そして、担当者のスキルによっては、警察のトレース結果と食い違うケースもあります。

    レポートの信頼性

    先に述べたように、調査会社のレポートと警察の追跡結果が異なることはあります。
    調査会社のレポートが必ず正しいとは限らないという前提を忘れてはいけません。

    もしあなたが調査会社に依頼し、レポートが納品されたとして――

    • その内容を正しく読み取ることができますか?
    • 間違いがあった場合、気づくことができるでしょうか?

    調査会社を利用する目的と、自分がどこまで求めているのか。
    その整理を、依頼する前に自分の中でしっかりしておく必要があります。


    調査料金について

    トレースやレポート作成には時間と専門知識が必要なため、調査料金が高額になる傾向があります。
    10万円〜数十万円単位の費用がかかることもあり、「分割調査」「ステップ調査」などの名目で、追加費用が次々に発生するケースもあります。
    また、被害額の〇%を報酬とする料金体系の会社も存在します。

    費用に見合う成果が得られるかどうかは、事前にしっかりと説明を受け、契約内容を確認することが不可欠です。
    「回収可能性があります」といった言葉をそのまま信じず、冷静に比較・判断してください。
    詐欺のあとに、さらに金銭を奪われる・心を傷つけられる――そんな“二次被害”を防ぐためにも。


    ※二次被害について
    本来、「二次被害」という言葉は、被害者情報が詐欺集団に知られ、再度別の詐欺に遭うケースを指します。
    しかしここでは、「信頼して依頼した調査会社や弁護士によって、さらに被害を受けるケース」を指しています。
    調査費用や着手金を支払ったにもかかわらず、調査がずさんだったり、まったく行われず連絡が取れなくなる――
    そのような事例も実際に報告されています。

    調査会社が悪質だった場合の相談先

    調査会社との契約後に、以下のようなケースがあった場合は、公的な相談窓口に連絡することができます:

    • お金を払ったのに調査が行われなかった
    • 十分な説明がないまま契約を急がされた
    • 返金に関する虚偽の説明があった

    このような場合は、消費者トラブルとして、以下の窓口に相談できます。

    • 国民生活センター(消費生活センター)
      https://www.kokusen.go.jp/
    • 消費者ホットライン:188(局番なし)

    まとめ

    自分のためにも、もうこれ以上傷つかないように。

    詐欺で心が折れかけているところに、追い打ちをかけるような悪質業者。
    しかも、それは「自分で選んだ道だった」――
    そう思ってしまったら、心が折れてしまうかもしれません。

    だからこそ、正しい情報をもとに、冷静に判断してほしいのです。

    「調査会社に頼めば返金できるかも」――そう思って調べている方にこそ、
    ぜひ、この現実を知っておいてほしいのです。