被害届と告訴状の違い

    被害届と告訴状の違い【どちらを出すべき?】

    詐欺被害に遭ったとき、「被害届」「告訴状」のどちらを出すべきか迷う人は多いと思います。このページでは、基本的な違いと実際の現場対応についてまとめます。

    詐欺は親告罪ではありません

    まず重要なのは、詐欺罪は親告罪ではないという点です。

    • 親告罪:告訴しないと起訴されない犯罪(例:名誉毀損、器物損壊など)
    • 非親告罪:告訴がなくても捜査・起訴が可能(詐欺はこちら)

    つまり、詐欺の場合は告訴しなくても起訴可能ですが、捜査するかどうかはまた別問題です。

    被害届とは

    被害届は「こんな被害に遭いました」と警察に報告するものです。しかし捜査の義務は発生しません

    • 目的:犯罪事実の報告
    • 捜査義務:なし(警察の任意捜査)
    • 提出先:警察署・交番
    • 書式:口頭可、署名指印のみでOK

    告訴状とは

    告訴状は「相手を処罰してほしい」という強い意思を示す正式文書です。

    受理されると、警察には捜査義務が発生し、刑事訴訟法第246条により捜査を開始したら必ず検察官に送致する義務も生じます。

    • 目的:処罰意思の正式表明
    • 捜査義務:あり(刑訴法230条)
    • 検察送致義務:あり(刑訴法246条)
    • 提出先:警察署(刑事課)または検察庁

    実際の警察の反応

    被害届と告訴状について警察に質問した際、以下のような反応がありました。

    警察:「被害届の段階でも捜査しています。告訴状を出しても対応は変わりませんよ。」
    私:「でも、告訴状は捜査義務が生じますよね?」
    警察:「受理はしますが、結果は変わらないと思います。」

    このように、「告訴状でも特別扱いにはならない」という説明をされることもありますが、実務上は以下のような違いがあります。

    • 被害届は捜査義務がなく、実質的に無視・放置されることもある
    • 告訴状は捜査義務と検察送致義務が生じるため、無視できなくなる
    • 「結果は変わらない」と言いつつ、記録と捜査フローは確実に動く

    筆者からのメッセージ

    ✅ 詐欺は親告罪ではないので告訴しなくても捜査は可能です。

    ✅ でも被害届だけだとスルーされることが多いのが現実です。

    ✅ 告訴状は“警察を動かす”“検察に送らせる”法的効果があります。

    ✅ 少しでも泣き寝入りしない記録を残すなら告訴状が有効です。

    【参考:刑事訴訟法の告訴関連条文】

    告訴・告発については、刑事訴訟法で以下のように定められています。

    告訴権者の範囲(第231条〜234条)
    告訴の期間制限(親告罪は6ヶ月)(第235条)
    取り消しや効力(第237条〜238条)
    誰でもできる告発権(第239条)
    代理人による告訴可能(第240条)
    提出先・提出方法(第241条)
    告訴後の処理フロー(第242条〜)

    > 詳細は e-Gov法令検索:刑事訴訟法 をご確認ください。