【TruBit Proと名乗るサイト】弁護士に頼めば返金できる?──調査・追跡サービスの注意点

    あんこさん

    詐欺だったこと確信しましたが、これからどうしたらいいの?

    あんこさんは、詐欺サイト(TruBit Proと名乗るサイト)からのメールが気になっていました。
    ”毎日3%の口座管理手数料”
    何も手続きしなければ、請求はずっと続くのでは?と不安になりました。計算すると口座にあるお金は約33日で空になってしまいます。確かに、そう考えると怖いですね。

    「誰か詳しい人に相談したい」
    そう思って情報を集め始めました。

    目次

    ネット検索で目にしたものは

    あんこさんは詐欺に遭った後、何をすればいいのか分からず混乱していました。

    ネットで検索すると、
    ・警察は何もしてくれない
    ・弁護士なら回収できる
    ・暗号資産詐欺に強い
    ・追跡調査可能
    といった言葉が並んでいました。

    F弁護士事務所に調査依頼

    あんこさん

    調査会社、弁護士の無料枠に相談して、F弁護士事務所に決めました。
    F弁護士事務所なら「口座凍結・返金対応・示談交渉もできます」と言われたからです。
    本当は事務所に行って弁護士の先生と話がしたかったのですが、私は地方在住で。
    近所に「暗号資産に特化」した弁護士さんが見つからなかったんです。
    そのため、東京のF弁護士事務所と契約をすることに決めました。

    F弁護士事務所のLINE無料相談に事件の内容を伝えると、担当の事務員さんから電話がありました。

    F法律事務所

    あなたのケースでは、回収の可能性があります。暗号資産はブロックチェーン上に取引が記録されています。通常途中でトレースできなくなることはよっぽどありませんが、絶対に最終ウォレットまで追跡できるとは言い切れません。最終ウォレットが海外だった場合、弊所では対応しかねますのでご了承願います。また回収を保証するものではありません。

    あんこさん

    「検証資金を支払わなければ手数料がかかる」というメッセージが気になっています。無視して大丈夫ですか?

    F法律事務所

    そちらは無視してください。絶対に追加送金はしないでください。LINEやInstagramは削除さえしなければブロックしていただいて構いません。

    あんこさん

    詐欺師は「シンガポール在住」と言っていました。LINE通話もしました。どう見ても日本人ではなかったですけど?海外の場合回収可能性はほぼないんですよね。それならもう無理ですよね?

    F法律事務所

    最近ではビデオ通話もAIで加工できるんです。海外のグループを装って実は国内の取引所を使っている場合もあります。そのため可能性はゼロではありません。

    あんこさんは、一番心配していた検証資金について、「支払ってはいけない」と言ってもらえて少し気が楽になりました。仮に請求書などが届いたとしても、F法律事務所に相談したのだから、助けてくれるだろうと思ったそうです。

    あんこさん

    可能性があるなら契約したいと思います。ただ、詐欺でお金が残っていなくて。30万円は支払えないです。

    F法律事務所

    私のほうで、上司に事情を説明して、少しでも金額を下げられないか交渉してみます。

    担当事務員さんが、「30万も出せそうにない」というあんこさんに、上司に事情を相談して値引き交渉をしてくれると言いました。その結果「20万円(税込みで22万円)でご対応いたします」と返事があり、契約することにしました。

    「可能性はゼロではない」という言い方は、どうしても抽象的ですよね。もっと事実ベースで説明してほしいものです。

    国内で、同種の詐欺について回収実績があるのかないのか。また、その確率がどのくらいなのか。

    「可能性ゼロ」と言い切るほうが証明が難しいですから。

    上司に交渉したら10万円も値引きされたという話も、正直不信感を抱きました。

    委託契約を交わす

    あんこさんは事務所と自宅が離れているため、電子契約と銀行振込で手続きを進めることにしました。

    あんこさんが「22万円ならお願いしたい」と伝えると、本契約の前にF法律事務所の対応内容などについて説明がありました。
    あんこさんが了承した旨を伝えると、「仮想通貨追跡調査委任契約書」が送られてきて、あんこさんは契約を交わしました。

    F法律事務所

    記載されている振込先に着手金の振込が確認されたら調査を開始します。

    ここまで、一度も弁護士と話す機会がなく、契約締結も事務員さんがやっていますね。

    あんこさん

    振り込みしました。調査をよろしくお願いします。

    F法律事務所

    振り込みが確認できました。では一緒に戦いましょう。

    あんこさんは、「できることはすべてやった」という気持ちだったそうです。
    F弁護士事務所の調査結果を待つことにしました。

    2週間、全く連絡がない。調査の結果は?

    F法律事務所

    調査には早くても2週間。複雑な場合は2か月程度時間がかかる場合もあります。

    調査に要する時間の説明を事前に聞いていました。調査結果を待っている間、あんこさんは「1次調査無料」の調査会社にも相談しました。

    調査会社

    トランザクションIDを教えてください。1次調査します。

    あんこさんはLINEでトランザクションIDを伝えました。すると1分かからず返事がきました。もちろん途中までの追跡ですが、図解付きで、あんこさんにも理解できました。

    調査会社

    トレース可能です。2週間もかからないと思います。今すぐ調査しないと出金されてしまいますよ。調査費用は50万円です。

    あんこさん

    2週間かからない?話が違うな。でも50万円も払えないし。

    50万円は支払えないけど、調査会社は早いな。という印象だったそうです。別の調査会社や、法律事務所にも「無料枠」で話を聞いて情報を集めました。

    すると、委託契約をしたF法律事務所の悪い噂ばかりはいってきます。口コミも悪い評価ばかり。

    契約してから2週間待ちました。法律事務所からの連絡はその間一切ありませんでした。
    口コミには「数か月連絡がない」「非弁提携だ」とも書かれていたことから

    あんこさん

    契約から2週間経ちました。一切連絡もなく不安でした。調査が終わってないにしても、進捗を教えてくれませんか?弁護士の先生ともお話ししたいです。あなた事務員ですよね?弁護士じゃないですよね?

    F法律事務所

    おまたせしました。こちら調査報告書です。結論から申し上げますと、最終ウォレットはBinanceという海外の取引所のウォレットでした。弊所ではこれ以上お役に立てません。警察にこの調査報告書をもって被害届を出してください。Binanceへの問い合わせは法執行機関からしかできません。犯人が逮捕され、返金請求をしたい、といった状況になればまたお役に立てるかもしれませんが現時点ではこれ以上の契約をすることはお勧めしません。以上です。

    あんこさんは、

    「だから、日本人じゃなかったって言ったのに!」
    「問い合わせたらすぐ報告書出てくるってどういうことなの?出来てたならすぐ送ってくれればよかったのに!」
    「結局一度も弁護士と話しなかったじゃないか!」

    怒りを感じながら、委託契約の内容は終わったこと。最終ウォレットは海外で回収は絶望的であること。状況を整理しました。

    警察に調査報告書を携えて、被害届を出しに行くことにしました。

    被害届を出しに行って思ったこと

    あんこさんは被害届を出すため、警察署に足を運びました。
    あんこさんの地域の警察署では「刑事課」が担当してくれました。
    やはり地方警察署の刑事課では暗号資産の仕組みには詳しくない様子です。
    それでもしっかり聞き取りをしてくれて、分からない部分は県警のサイバー課と連絡を取って捜査をしてくれると言ってくれたそうです。

    あんこさん

    弁護士法人に追跡調査依頼をしたら、最終ウォレットがBinanceだから警察に行くように言われました。

    刑事さん

    民間の調査報告書に証拠能力は無いです。警察は警察で追跡をし、捜査をします。調査結果も異なることもあります。
    民間との違いは、進捗をお知らせできない点が大きいですね。捜査情報は被害者にもお伝えすることはありません。また、暗号資産詐欺の場合、犯人逮捕は非常に困難である事、LINEや銀行に照会をかけて返事があったとしてもその情報もお伝え出来ないです。それが知りたい場合は弁護士さんに頼むという手段もありますが、、、これは独り言ですが、個人としてはお勧めしないです。

    あんこさんは、ネット記事に「証拠がないと警察は動かない」「被害届が受理されない」と書いてあったので、被害届を受理してもらえると思っていなかったそうです。その点を刑事さんに聞いてみました。

    刑事さん

    ネット情報も真実ばかりではないです。警察は、被害を報告に来た人に対して、受理しないなんてことしないです。少なくともこの警察署ではそんなことしません。

    初日は聞き取りだけでしたが、後日証拠となるLINEの印刷やスクショの提出をしに再び警察署を訪れると、刑事さんが被害届を作成し用意してくれていました。発行された事件番号を教えてもらい、今後どうしたらいいのかも相談にのってくれたそうです。

    あんこさん

    初めから警察に被害届を出していればよかった。どうせ証拠にならない調査報告書に22万円も支払った意味があったのかな。「海外の取引所だったからおしまい」だなんて見捨てられた気分だし。

    詐欺サイト(TruBit Proと名乗るサイト)で回収実績あり?!

    あんこさんは、刑事さんや調査会社から情報を得て、「海外の取引所では、日本の警察の捜査は及ばないこと」「海外の取引所が開示請求に応じるのは稀なこと」「回収可能性は、限りなく0に近いこと」を理解しました。

    そして、刑事さんの話から、「調査結果が必ずしも正しいとは限らない」という情報も得ました。

    あんこさん

    暗号資産の調査結果なんて、見たってわからないと思ったけど、調査報告書を理解しないと間違いに気が付けない。

    そう思ったあんこさんは「イーサスキャン」という追跡ツールを使って、調査報告書が正しいのかを調べ始めました。

    それと同時に詐欺サイト(TruBit Proと名乗るサイト)の情報も収集しました。すると、同じサイトで詐欺にあった被害者の返金実績ありと書いてある弁護士事務所を見つけました。

    あんこさん

    最終ウォレットがBinanceのはずなのに。回収できた?どういうこと?

    無料相談枠があったため問い合わせてみました。すると、こんな回答を得られました。

    A法律事務所

    この詐欺サイトは、複数の詐欺グループが使っていますよ。だから最終ウォレットが常にBinanceというわけではないです。弊所の回収実績あり事例は、最終ウォレットが日本の取引所だったからです。

    それから、F法律事務所との経緯についてですが、「非弁行為の可能性」があります。東京弁護士会に相談窓口がありますから、契約解除して可能な限り着手金だけでも返してもらってください。あなたのケースでは弊所は委託契約はできないです。回収可能性は低いですから。着手金が戻ってきたらそれを大事にしてください。これ以上お金を使わないでください

    非弁の件まで説明してくれて、このケースは回収可能性が低いからもうお金を使わないほうがいいと忠告してくれました。A法律事務所のほうが誠意が感じられ信用できる気がします。

    この詐欺サイトは、複数の詐欺グループ(例:グループA、B、C、D)が利用していて、
    そのため、同じサイトでも送金先ウォレットの行き先は異なる。

    回収実績があるケースというのは、最終ウォレットが日本国内取引所だったため、開示請求が可能だった。(内閣府 消費者委員会|第204回本会議 資料一覧ページでは「SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺についていえば、暗号資産送金は、※回収事例は1件も報告がない。」と記載されていたが、報告がないだけで実際は回収できているということでしょうか?)

    このサイトで騙されたから、最終アドレスがBinanceとは限らない。と教えてくれたんですね。

    あんこさん

    じゃあ、刑事さんが言うように「F法律事務所の調査報告書が間違っている可能性がある」のなら、最終ウォレットが国内の取引所の可能性もあるのでは?

    あんこさんは、調査報告書の内容をそのまま信じるのは危険だと感じました。本当に最終ウォレットがBinanceなのか、きちんと自分でも調べることにしました。報告書を出されて終わりではなく、そこから自力で確認しようと考えたのです。ゼロから調べるわけではなく、答え合わせのような感覚で追跡を始めました。

    まとめ

    弁護士事務所や調査会社の報告が絶対正しいとは限らないことがわかりました。
    非弁提携のような怪しい仕組みも存在し、調査報告は形式だけの場合もあります。

    ネット情報と、今回あんこさんが経験した事実とは異なることがありました。それは警察はきちんと話を聞いてくれ、報告書が無くても届け出は受理され、捜査もしてくれるということです。

    民間の調査報告は民事交渉でも証拠として弱いケースがあり、被害届や告訴状の代わりにはなりません。

    あんこさんは調査報告書を鵜呑みにせず、本当に資産の送金先がBinanceだったのか、自分の目で確認することにしました。

    ※この記事に登場する名称・団体は仮名です。

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