あんこさんはF法律事務所の調査報告書をうけとり、事務員からこういわれました。

最終ウォレットはBinance(海外の取引所)だったので、F弁護士事務所ではこれ以上対応できません。
警察にこの報告書を提出し、警察からBinanceに照会してもらってください。
ネット上では「暗号資産詐欺は被害届が受理されにくい」とも言われています。
あんこさんも、心の中でこうつぶやきながら警察署へ向かいました。



警察に相手にしてもらえないのかもしれないな…。
そう思っていたあんこさんですが、実際には、刑事さんが丁寧に話を聞いてくれて、
被害届もきちんと作成・受理してくれたのです。
調査報告書の取り扱い
あんこさんは、自力調査の結果、調査報告書に間違いを見つけたため、再度警察へ向かいました。



提出済みの調査報告書に間違いがありました。これはF法律事務所が修正して、再提出してきたものです。



ああ、それですね。不要ですよ。調査報告書に証拠能力はないですし、警察は警察で独自に捜査していますので。



初めから、調査報告書は「参考資料」としての扱いで、証拠能力はないと聞いていましたから。修正版を提出しても、その評価は変わりません。警察が使う追跡ツールは、イーサスキャンとはまったく別の「マネーロンダリングされても追跡できる」ような高精度・高機能のものです。証拠能力のレベルが違います。
あんこさんが刑事さんに伝えたことは
あんこさんは、自力追跡でF法律事務所とは違う結論を出していました。
しかし「現金化するならCEX」という正規ルートしか見ていなかったため、やはり最終ウォレットはBinanceだろうと思いました。
あんこさんは、Binanceサポートに詐欺被害の経緯を伝え、開示請求を希望しました。以下、Binanceサポートからの回答です。
Binanceからの公式案内(要旨)
Binanceでは、被害者本人からの報告だけでは対応ができず、警察等の捜査機関からの正式な通報(KODEX経由)を受けてから対応を開始する体制となっております。
通報には以下の専用フォームをご利用ください: hxxps://app.kodexglobal.com/binance-cn/signup



「KODEX(コデックス)」とは、暗号資産取引所(Binance等)が各国の捜査機関と連携するために設けている公式通報プラットフォームです。
・無料で使用可能(メール認証あり)
・登録後は事件ごとに「チケット」を作成し、関連情報を提出可能
・提出後、Binance調査チームと直接連絡・進捗確認が可能
KODEX通報をお願いしたい



Binanceと連絡を取りました。警察からKODEXプラットフォームを通じて正式な通報(チケット送信)をしてください。必要資料(調査報告書・関連TxID・被害概要等)はすべて提出可能です。これは警察しかできないんです。お願いします。



それについては、サイバー課と連携・確認します。



警察署の刑事さんは「暗号資産の仕組みに詳しくない」と言いつつ、分からない部分はきちんとサイバー課に問い合わせて対応してくれたんですね。
告訴状を提出したい
あんこさんは、被害届と告訴状の違いを勉強しました。
そして、被害届けでは、この件に関して警察は積極的には捜査してくれないだろう思いました。



KODEXもやってくれるのかわからないし。
告訴状を提出しようと思います。
刑事さん、正直に言ってください。告訴状は受理したくないものですか?



受理したくない?そんなことはありませんが、もう被害届を受理して捜査もしています。
そのため、手間をかけて告訴状を作る必要はないと思います。
告訴状を提出するなら受理しますよ?



被害届けでは捜査義務は無く、暗号資産詐欺の場合、犯人逮捕の可能性が低いことから「捜査すらしてくれない」というイメージがあります。担当刑事さんはすでに捜査を進めてくれていたため、「告訴状を出さなくても捜査はしている。だから不要ですよ」と回答したんですね。
刑事さんが教えてくれたことは
個人情報が心配なら
あんこさんは、詐欺サイト(TruBit Proと名乗るサイト)に運転免許証の写真をKYC認証の時に送ってしまいました。悪用されないか心配でした。その点、刑事さんに聞いてみました。



被害届が受理され、事件番号が発行されています。もし悪用された場合、あんこさんに問い合わせが来ることは避けられませんが、「被害届を出しています。それは私ではありません。悪用された可能性があります」と主張できます。それでも気になるなら、免許証を再発行することもできます。



2025年7月現在の話ですが、運転免許証は紛失に限らず再発行できます。例えば「写真が気に入らない」という理由で再発行する人もいるそうです。(有料です)
捜査の要望は
あんこさんは、詐欺のやり取りや送金記録など、さまざまな証拠を揃えており、
・LINEの照会をしてほしい
・Instagramの照会をしてほしい
・銀行振り込みがあった個人を特定してほしい
・KODEX通報してほしい
など、捜査してほしいことがたくさんありました。



ご要望の捜査をしたとしても、結果はあんこさんに伝えられません。
どうしてもその内容が知りたい場合は弁護士さんに依頼すれば照会もしてくれるし、内容も共有してくれると思います。
ただ、分かったところで逮捕するのは警察ですから。
それに、その情報が犯人に結びつく可能性は低いです。詐欺グループは入念に準備しているから、これだけ証拠があっても逮捕出来ていないというのが現実です。
これも独り言ですが、よく考えて判断してほしいと思います。



KODEXだけは警察経由でしかできないことですが、他については「弁護士に依頼すれば可能」です。現実を知ったうえで、できること・できないことを見極めていく姿勢が大事ですね。
告訴状を提出する意義
あんこさんは、色々と考えた末に「告訴状を提出する」という決断をしました。
それは、ただの感情論ではありません。
ちゃんと「意味がある」行動だと、あんこさん自身が気づいたからです。



被害届は出したけど…それだけじゃ何も進まない気がして。やっぱり告訴しようかなって



その判断、正しいと思います。暗号資産詐欺は、被害届だけだと後回しにされることもあるようです。
告訴状は、未来を変える第一歩
暗号資産詐欺の多くは、海外に拠点を持ち、匿名性の高い技術を悪用する巧妙な手口です。
被害届だけでは捜査が進まず、泣き寝入りになってしまうこともあります。
けれど、告訴状が受理されれば、警察は事件を検察官に送致する義務が発生します。
つまり、正式な捜査へ進む“スイッチ”になるのです。



技術のことも、正直あまり分かってなかった。でもLINEとかもP2Pって聞いて驚いたよ。
技術は進化している。けれど、まだ穴だらけ
詐欺師が悪用しているのは、実は最先端の技術です。
- P2P(ピアツーピア):LINE、ビットコイン、ファイル共有などに使われる「ユーザー同士が直接やりとりする仕組み」。
- Web3:ブロックチェーンを活用し、中央に依存しない透明性の高いネットワーク。契約の自動化やメタバース、不動産契約などにも応用が期待されています。
これらは将来性のある技術ですが、制度や社会の理解はまだ追いついていません。
その“すき間”を突いて、詐欺が行われているのです。



暗号資産詐欺被害者の声が増えれば、P2PやWeb3の問題点も明るみになります。“これは無視できない”って社会も動きだす。そして該当技術や法整備は推進されると思います
声が積み重なれば、無視できない
告訴状は、単なる書類ではありません。
“問題がここにある”という記録として残ります。
日本から海外に流れるお金。
その構造が繰り返され、放置されてきたとしたら──
「国は分かっているのに何もしないのか?」という声が、世の中を動かすきっかけになるはずです。
あんこさんが気づいた、“この詐欺から見えた7つの問題点”
あんこさんは、今回の詐欺被害を通じて、単に「騙された」では済まされない数々の“仕組みの穴”に気づきました。
① SNS(LINE・Instagramなど)の通報が形だけ
詐欺被害を通報しても運営と話ができない。実害が出ていても開示請求しづらく、詐欺の温床になっている。
② DApp連携が無審査・無管理で危険
誰でもサイトを作ってMetaMask等に接続できる。詐欺師が使いやすく、通報されるまでは放置状態。
③ 「海外だから仕方ない」で放置される国際的な詐欺
外国の詐欺グループが日本人を狙い、日本のお金を奪っている。
でもこれは、日本だけの問題ではありません。
今この瞬間も、世界中で同じような詐欺が起きていて、各国の被害者が「海外だから仕方ない」と絶望している。
そして、犯人たちはそれを分かったうえで、“自国以外の人を狙えば安全”という前提で詐欺を行っているように見受けられます。
国際協力による捜査体制を作ることができれば、この“安全地帯”を崩せる。
犯人たちは「国境を越えれば逃げ切れる」と思っている──
それを終わらせる仕組みが必要です。
④ ウォレットアドレスの“無責任な透明性”
ブロックチェーンは資金の流れがすべて公開されている。
でも、「誰のものか」は分からない。
詐欺と分かっても、止める手段がない。
問題は、詐欺に使われているアドレスでさえ、誰が持っているか特定できないことです。
自己管理型ウォレット(セルフカストディ)でも、最低限の本人認証(KYC)を義務化すべきでは?
もちろん、通常のユーザー情報は秘匿でいい。
でも事件が起きたとき、開示請求に応じられる仕組みが必要です。
いまは、匿名性を“悪用”した詐欺にやられ放題の状態です。
⑤ SNS詐欺アカウントが削除されにくく復活も容易
SNS上で詐欺に使われたアカウントは、通報しても削除に時間がかかることが多く、運営と直接やりとりできる仕組みも整っていません。
AIによる自動対応が中心とされ、人の目による精査や緊急対応が間に合わない現状も指摘されています。
さらに、たとえ削除されても、詐欺師はすぐに別のアカウントを作成できるため、同じ手口が繰り返されます。
「なりすまし」「盗用画像」「詐欺的メッセージ」の通報があったアカウントについては、より迅速で確実な対応が求められます。
⑥ 偽サイトのドメイン取得が簡単すぎる
正規の金融サービスに似せたドメインが誰でも安く取得でき、被害が拡大する。
⑦ 被害報告がバラバラで一元管理されていない
どこに届ければいいのか、誰が集約しているのかが不明。政府機関ごとにバラバラ。
声を上げれば、変えられるかもしれない
これらの問題は、今まさに起きていることです。
そして、被害者が黙っていては、何も変わりません。
あんこさんはこう考えました。



これだけ問題がはっきり見えてるのに、声をあげないのはおかしいよ。
私は、他の人が被害にあわないためにも告訴状という形で記録に残そうって思ったの



告訴状は、「犯人を罰してほしい」という意思表示であると同時に、
こうした技術や制度の“穴”を可視化する記録にもなると私は思います。
たくさんの人が声を上げれば、国も無視できなくなる。
仕組みも、制度も、法整備も、きっと少しずつ変わっていきます。
まとめ
「お金は戻らない」だけで終わらせない
詐欺に遭い、お金を失い、何もできずに終わる…。
そんな理不尽な結末を変えるために、告訴状という選択肢があります。
高額な調査費を払わずとも、告訴はできます。
費用をかけず、現実的に取れる“戦い方”のひとつです。
技術の未来をよくするために。
誰かの被害を防ぐために。
そして、あなた自身の「納得」のために。
次の記事では、実際に受理された告訴状の例文を紹介します。
どうか、あなたの声もここに重ねてください。
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